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もっとパンづくりが好きになって、ずっとパンづくりが楽しめるように。

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札幌にはたくさんのパン屋さんがありますが、そのなかでも“どんぐり”は独自の価値観を持って展開しています。例えば、社内での様々なチーム活動も“どんぐり”らしさのひとつ。チェーン店のように本部から各店舗へ業務や新たな取り組みの指示があるのではなく、店舗のスタッフから新たなアイデアや商品が生まれてくる企業風土は他では見られないものです。今回は、そういった価値観のルーツともいえる様々な社内活動について、本部の猪俣直哉さんにお話を伺いました。

−“どんぐり”は他のパン屋さんと異なる雰囲気を持っています。それはどういったことが根底にあるのですか?

“どんぐり”は、商品開発の段階から他のパン屋さんとは少し違います。社長から社員へ、本部の開発部署から各店舗へというように新商品を落とし込むことはほとんどありません。

店舗のスタッフが率先して新商品を考えていて、今となっては商品の98〜99%くらいが店舗主導で生み出されたもの。でも、だからといって本部が各店舗に任せっきりにしているわけではないんです。店舗主導といっても商品を考えたり作ったりするのが好きなスタッフもいれば、苦手なスタッフもいます。そうすると新商品のアイデア出しの時にスタッフの間で、自然と優劣がついてしまうんです。本部としては、スタッフ誰もが活躍できるような会社にしたい。そこで社内チームを作って、色々な角度からパンづくりを考え、作り出せるような取り組みをしています。

−なるほど。そのひとつが“TOPPI”ですね。

“TOPPI(とっぴ)”は新商品を考えたり、作ることが好きなスタッフが集まってできたチーム。一般的な企業によく見られる縦割り、横割り、所属店舗も関係なく集まって商品づくりのサポートをするために結成されました。 “TOPPI”が店舗に対して「これを作ってください」と指導するのではなく、何か商品を考えたくなるようなキッカケを作ったり、商品のアイデア出しの時にアドバイスをすることがメイン。あくまでも、このチームの目的はサポートなんです。

ちなみに、この“TOPPI”という名前なんですが、北海道育ちの人であれば聞き馴染みのある言葉ではないでしょうか。例えば新商品だったり、美味しいパンが発売されたらスタッフも休憩の時に食べたいので「取っておきたい」と思いますよね。その時に、つい言ってしまう北海道弁「これ、とっぴ!」から生まれたんです。音の響きも可愛いですし、覚えやすいですよね。

−具体的に、どのような活動をしているんですか?

メンバー構成は本部・各店舗の様々な役職・部門から集まっていて、社内で隈なく情報が共有できるようになっています。そのメンバーで一昨年、去年と行ったのが、入社2年目のスタッフを集めた「札幌市内パン屋巡り」です。

“TOPPI”のメンバーが引率をして、市内のパン屋を巡って一緒に食べたり、カフェでお話ししたりしました。もちろん、それで「楽しかったね」「おいしかったね」で終わるわけではありません。見て回ったパンを参考に、新たな発想で商品開発まで行います。“TOPPI”はそのサポートをして、実際の販売数、どういった売り場で販売したかを全店・全スタッフに共有しています。

この他にも“TOPPI”では、2ヶ月に一度、各店舗で爆発的に売れたものを他店舗に紹介して表彰するヒット賞の運営も担当しています。実は、このヒット賞の2022年・年間MVPに2年目パン屋巡りの時に開発したパンが選ばれたんです。これは“TOPPI”によって生まれた成果といえますね。

これはひとつの例であって、パン屋巡りに参加したスタッフ誰もがすぐに商品開発が得意になるわけではありません。“TOPPI”の役割としては、この商品開発に至るプロセスのなかで色々なアドバイスをすることが大事。このコミュニケーションによって、商品開発が苦手な人でもチャレンジしやすい雰囲気が作れるようになればいいなと考えています。

今後は、メンバーそれぞれが仕事を抱えながら取組みを進めているので大変なんですが、サラダの提案会をしようかと考えています。“どんぐり”はパンだけでなく惣菜やサラダも武器なので、そういった部分にも力を入れていきたいですね。そして、どんどん新しい商品開発を続けていきながらお客様がワクワクできる、面白いと思えるお店づくりを“TOPPI”が中心になって実現していければいいなと思っています。

− “TOPPI”以外に“ぽっけ”という取り組みが始まったとお聞きしました。

そうなんです。最近、新たに“ぽっけ”というチームを立ち上げました。私たちがこういった社内での取り組みを続けているのは、どんなことも好きでなければ続かないと考えているから。誰かに企画されたことをやらされるよりも、自分で考えて行動した方が達成感は強い。それをスタッフにも経験してもらいたいですね。

“TOPPI”は3年ほど前に立ち上げたチームなので、そこに参加していない店舗スタッフがいることは仕方がないこと。もちろん、本来の業務が優先ですから強制ではなく自主的な参加でいいんです。でも、可能であれば入社5年目以上のリーダー、サブリーダークラスに店舗業務プラスアルファの取組みをしてほしいと思っていました。そこで、得意なことや好きなことでチームを作ってみませんかと社内で投げかけたところ、かわいいパンを作るのが好きなスタッフが手を挙げてくれたんです。

お子さんが好きなキャラクターパンだったり、プチパンだったり、SNS映えするような商品があったらお客様も喜ぶんじゃないかということで新たなチームとして“ぽっけ”を結成しました。すると絵を描くのが上手な人、手先が器用な人、カラフルな商品をお店に並べたい人など、パパッと各店舗から集まったんです。

“ぽっけ”という名前は、色々なものがポケットから出てくる某キャラクターにちなんで、色々なアイデアが出てくるチームになるようにと名付けられました。“TOPPI”に負けないインパクトのある名前ですよね。現在は、まだ始動したばかりなので試行錯誤を繰り返している最中です。とあるキャラクターとのコラボレーション企画や、立体的な3Dのキャラクターパンの企画…まだどれも上手くはいっていませんが、これからどんなアイデアが出てくるのか楽しみにしています。

−ここまで製造寄りのお話でしたが、販売スタッフに向けた取り組みはありますか?

先ほどお話ししたヒット賞は、どうしても製造スタッフ向けの色合いが強いので販売スタッフ向けにも何かコンペティションができないかという話は常々出ていました。そこで今年から店頭にあるPOPと、イーゼルに置いてあるブラックボードのグランプリをスタートさせたんです。

まず、“どんぐり”の代名詞ともいえる「ちくわパン」をどのようにPOPで売り込むか各店舗で競い合う「ちく1(ちくわん)グランプリ」。ベテランから若手まで色々な想いを持っている商品なので、どんなアイデアが出てくるのか楽しみですね。今後も定番商品を中心に展開していけたらいいなと思っています。

それと、もうひとつが店頭に置いてあるブラックボードの見やすさやインパクトを競い合う「イーゼルD-1グランプリ」です。こちらは今までも各店舗で趣向を凝らして描かれていて、いつも感心しているんですが、さらに磨きがかかっていくことを期待しています。

−なるほど、それは楽しみですね。それでは次に猪俣さんも講師として活躍されているパン教室について教えてください。

パン教室は、お客様が“どんぐり”を知るきっかけになればいいなと思って続けています。正直この取組みで売上を増やすことは考えていません。

パン屋に限らずどんなお店でもそうですが、顔馴染みのスタッフやお気に入りのスタッフがいるから買いに行きたいと思ってもらえることは、とても大事なこと。だから、まずパン教室に参加される方には、“どんぐり”にはこんなスタッフがいるんだって知ってもらいたいんです。できるだけ私だけでなく店舗のスタッフもお手伝いとして来てもらって、発酵時間に参加者と話してもらっています。パンのことでも、お店のことでも、趣味のことでも、なんでもいいんですよ。こんな人が“どんぐり”のパンを作っているんだって覚えてもらえるようにしています。

現在は、主に区民センターさんや北ガスクッキングスクールさんなどからお声掛けいただいて開催しています。私たちのスタンスとしては、私たちが自らパン教室の内容を企画したり、主催者の方と一緒に作るパンを考えています。小学生対象の場合は、メロンパンやクリームパンが定番。大人が対象であれば、ちくわパン+他のパンの組み合わせがほとんどですね。やっぱり“どんぐり”といえばちくわパンなので、評判は上々です。あと、教室の後にアンケートを書いてもらっているので、そこで希望のメニューが出てきたら次回以降で作るようにしています。

パン教室ですから基本はパンの作り方を教えることがメインです。でも、私としては作って帰るだけではいけないと思っています。せっかくお客様と直接お話しできる機会なので、お店に対する要望をできるだけお聞きしていますね。例えば、こんなパンを作ってほしいとか、昔あったパンを復活させてほしいといった意見があれば店舗にお願いしたり…言いにくいかもしれませんが、普段は言いづらいクレームなんかも言ってもらえると嬉しいですね。

−コミュニケーションの場として活用されているんですね。

そうですね。コミュニケーションという意味ではお客様だけではなく、スタッフの家族向けのパン教室も開催しています。お父さんやお母さんは、こんなところで働いているんだって誇りに思ってもらいたいですし、家族一緒にパンを作ることでパン屋という仕事に対する理解が深まればいいなと思っています。
その他にも取引先の問屋さんやメーカーさんなどをお招きすることがあります。いつも顔を合わせている営業さんだけでなく、お会いすることの少ない事務さんや経理さんにも参加してもらって、一緒にパンづくりをしながら信頼関係を築いていければと考えています。

−コミュニケーションを考える上で、最近ではSNSの存在は欠かせないと思いますが、“どんぐり”ではどのようなSNSを使って情報発信しているんですか?

現在、YouTubeとインスタグラムを活用しています。YouTubeを担当しているのは、動画編集に興味があった本店所属のスタッフ。コンテンツとしては“どんぐり”の良いところを紹介することはもちろん、社長に“どんぐり”に対する想いを話してもらったり、ベテラン社員による製造のお手本などが上がっています。お店のYouTubeってお客さま向けが多いと思うんですけど、“どんぐり”の場合は社内向けのものが多いかもしれませんね。実際に新入社員が観て参考になる動画が多いので。

インスタグラムについては当初、担当者が1人だったこともあって投稿頻度が少なく、あまり活発な感じではありませんでした。でも、どうせやるなら各店舗から担当者を募って発信した方がいいんじゃないかと思い、2019年にチーム化。商品を売り込むのではなく、インスタを通して“どんぐり”を楽しんで、ワクワクしてもらうことを目的に運営しています。最近は動画投稿も増えてきていて、ASMRのような感覚でカレーパンの揚げてる音を聞いてもらうとか、そういった挑戦もしています。

−その他に社内での取り組みで紹介したいものはありますか?

私たちが暮らす北海道という地域のこと、この街で長く営んでこられた企業のことなどを“どんぐり”のパンを通して発信できるのではないかと考えています。例えば、由仁町で育てられている“つるきち”という小麦があるんですが、その農家さんが「“つるきち”を “どんぐり”で使ってくれないか」とオファーしてくれたんです。そこで社内でメンバーを募って、その農家さんにお邪魔して刈り取りなどを体験させてもらった上でパンづくりをしました。“どんぐり”は農業体験を通してスタッフの経験値を、“つるきち”は品種の知名度を互いに高め合えるWin-Winの関係性が構築できたコラボ企画になったと思います。

同じような発想で現在進行中のものが、醤油や味噌で有名な札幌市東区にある福山醸造さんとのコラボレーション。醤油工場が北海道遺産に認定されるほど歴史深い企業です。もちろん、“どんぐり”では全国的なメーカーの醤油も使わせてもらっているんですが、せっかくなら北海道企業とのコラボも進めていきたいなと考えて動き出しました。私たちから福山醸造さんに働きかけて、工場見学もさせていただきました。やはり、ただ仕入れた醤油で商品開発をするよりも古くからある建物を見て、歴史を感じることでパンづくりにも活きてくるのではないかと期待しています。

このような企業や地域とのコラボは、これからも続けていきたいですね。今までパンになっていなかった食材でも“どんぐり”だからこそノウハウを持っていますし、パンにできなかったとしても惣菜やサラダとしてレシピを考えられます。地域貢献というほど大袈裟なものではありませんが、今後も多方面に働きかけられるポテンシャルの高い取組みになっていくのではないかと思います。

−様々な取り組みを進めていくなかで今後、新たに挑戦したいことはありますか?

これからも新しい動きは必ずあると思います。それに加えて現在進んでいる取組みのコラボを考えていきたいですね。YouTubeチームがパン教室を取材してもいいですし、パン教室の発酵時間に子どもたちにポップづくりを教えてもいい。今はバラバラに進んでいるチームがつながっていけば、お互いの理解度も高まって“どんぐり”全体の底上げにつながるはずです。

そのためには、もっと「若い力」が必要です。若い人は頭が柔らかくて発想が豊か。私たちの世代とはまた違った感覚を持っているので、そういった力を是非とも発揮してもらいたいですね。“どんぐり”は社内での上下関係の意識がほとんどなくて、あくまでも「並列」と考えています。だから、気兼ねなく積極的に様々なチームに参加してほしいですし、意見もどんどん出してほしいと思っています。

− “どんぐり”のさらなる進化に向けて、これから楽しみな取組みのお話ばかりでした。

猪俣さん、お忙しいなかお話いただき、ありがとうございました。これからも公式サイトでは新たなチームが結成されたり、取組みが始まったら、下記のページを通して紹介していく予定です。どうぞご期待ください。
https://www.donguri-bake.co.jp/recruit/in-house-activities/

 

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Profile
本部 製造統括チーフ 猪俣直哉

パンづくりにおける製造工程の管理や原材料の仕入れなどを担当。根っからのパン好きで、ハード系からソフト系、甘い系からしょっぱい系までジャンルを問わずに広く食べ、プライベートでもパン屋巡りをするほど。本人曰く“どんぐり”の仕事は、もはや趣味の延長。