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ひとりでも多くの人に美味しさを届ける、どんぐりならではの社会貢献を。

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「どんぐり」では、いつでもたくさんのパンやおかず、サラダを並べて、お客さまに選ぶ楽しさを味わってほしいと願っています。それはどの店舗でも同じ。たとえ閉店時間が近づいていたとしても店頭の商品が少なければパンを焼き、できるだけ焼き立てのパンを買っていただけるようにしています。そのため閉店時に商品が残ってしまうことも。近年、フードロスの問題やSDGsなどが注目されていますが、実は「どんぐり」でも閉店時に残った商品を上手に再活用しています。この取り組みを担当している本間啓志チーフに詳しく教えてもらいました。

―現在取り組んでいる商品の再活用について経緯を教えてください。

「どんぐり」は以前から閉店間際であっても焼き立てのパンを食べてもらいたいという強い想いがありました。そうすると、どうしても閉店後に商品が余ってしまうという問題があったんです。小麦をはじめとした原材料を丹精込めて作ってくれた生産者さん、その原材料を卸したり運搬してくれる業者さん、その集大成として美味しいパンを一生懸命作ってくれる「どんぐり」のスタッフ。パンづくりに関わる全ての方々の努力を少しでも無駄にしないようにするには、どうすればいいのか。何か良いアイデアはないものかと、いつも頭を悩ませていました。
さらに新型コロナ感染症の拡大によって、来店できなくなったお客さまが増えてきたんです。今までと変わらず、なんとかしてお客様へパンを届けることはできないだろうか。新たな問題にも向き合わなくてはなりませんでした。

この数年は、新型コロナの感染対策もしなければならず試行錯誤の連続でした。しかし、そのなかには課題解決に向けた発見もあったんです。一時期、感染防止のためにパンの個包装をしていたんですが、この取り組みが大きなヒントに。なぜなら個包装されていれば閉店後そのまま冷凍できて美味しさを保つことができる。そうすれば格段に配送しやすくなるんです。この発見は、最近始めた取り組みの出発点になっています。

-その冷凍したパンをどのように活用しているのですか?

まず取り組んだのは、この冷凍したパンをオンラインショップで販売することでした。各店舗で閉店時に余った商品をオリジナルセットにして販売することにしたんです。名前はそのまま「もったいないセット」。山鼻店であればランダムに18個のパンが入っていて、どのパンが入っているか分からないお楽しみ感が味わえます。琴似店であれば人気のトップ5が入っていたり、大通店だったらスタッフのおすすめセットだったり…それぞれの店舗ごとにバリエーションを作っているのでオンラインでも選ぶ楽しみを感じていただければいいなと思っています。
「店頭で受け取れますか?」というお問い合わせをよく受けるんですが、余った商品を冷凍して再活用しているものなのでオンラインでしか取り扱えないんです。そういったことも踏まえて、よりお客様の近くで販売する方法はないかと、さらに模索を始めました。

▲山鼻店の「もったいないセット」

-それが企業様とのコラボレーションということですね?

当初は街なかのオフィスで昼食に買っていただけるように学校の購買のような形態で運営できないかと考えていました。しかし、そもそもパンを販売するためのスタッフが確保できないという企業が多く、販売のスキームが構築できなかったんです。

そこで辿り着いたのが自動販売機。販売のために人を雇う必要もなく、気軽にパンを買っていただけると思ったんです。でも、自動販売機1台に35箱しか入らない。運搬・補充・売上管理などを考えると正直、実現は厳しいかなと諦めかけていました。ところが創伸建設様が補充と売上管理を自社でやるので、やらせてほしいと言ってくださったんです。

創伸建設様が、私たちとの異業種コラボレーションに取り組んだ理由は2つありました。ひとつは、建設現場で働く人たちに多様な「食」を楽しんでほしいということ。もうひとつが建設現場というのは音の問題だったり、大きな車両が通ったりとマイナスのイメージがありますが、そこでパンの自動販売機を設置して、地域の方々に建設現場に足を運んでいただくことでした。より身近に感じてもらうことを目指したそうです。このコラボレーションはテレビなどの取材を受け、かなり話題になりました。一時期は毎週のように放送され、反響も大きかったですね。実際にテレビを観て、お問い合わせをくださる企業様もいて、「どんぐり」の取り組みを知っていただくという意味では大きな宣伝になったのかなと思っています。

創伸建設様のように働く人々の「食」を充実させるという意味では、一鱗共同水産様とのコラボレーションもお話しなければなりません。一鱗共同水産様は、札幌市中央卸売市場で水産物の仕入れ・販売を行う仲卸。市場は朝早くから開いていますが、そこで働く人たちが朝食として食べるものが意外と少ないという相談を受けて、閉店後に残ったパンを提供して販売していただくことになりました。

パンの運搬も一鱗共同水産様の配送ルートに「どんぐり」の店舗を組み込んでもらい、ピックアップしていただいています。実は、なかなか一般人が出入りしづらい市場内での販売なので、うちのスタッフは誰も見たことがないんですよね。きっと今回の取材が初公開になると思います。

-企業様以外にも販売されているんですか?

北海道大学の恵迪寮でも活用してもらっています。恵迪寮というのは学生が自分達で運営している自治寮。元々は別企業に寮で販売するパンの製造を委託していたそうなんですが、そこが辞めてしまったらしく「どんぐり」でパンが作れないかと相談がきました。ただ私たちも店頭分を作るのが精一杯なので、閉店後の商品であれば…ということで販売が始まりました。「どんぐり」のパンは、惣菜パンも多いので学生さんたちには、とても好評ですよ。

▲どんぐりの惣菜パンを購入してくれてている恵迪寮の学生

この他にも学生会館を運営している企業様からパンを使わせてもらえないかという問い合わせがあり、他の企業や恵迪寮と同じように閉店時商品を活用して2023年からテスト運営が始まるところです。

-販売以外で閉店後の商品を活用する取り組みはありますか?

パンを通した社会貢献ができないかと常日頃から考えていて、特に子どもたちのために何かできることはないだろうかと模索していました。そのなかで縁あって羊ヶ丘養護園様にパンを寄付させていただいています。2週間に1回ほどお渡ししているんですが、大きな教室にパンを並べて「パン屋さんごっこ」のような形で、子どもたちが楽しんで食べられるようにしてくださっているそうです。子どもたちも喜んでくれているみたいで、お礼の手紙や食べている様子を描いた絵が送られてきます。この取り組みをやって良かったなと思うと同時に、もっと美味しいパンを作ろうというモチベーションにもつながっていますね。

その他の取り組みとしては、フランスパンが余ったらラスクにしたり、食パンが余ったらトーストのような形で調理したり、耳が余ったらパン粉にしたり…可能な限り無駄にならないように二次利用しています。あとは飼料として利用してもらってもいますよ。

▲羊ケ丘養護園では、「羊ケ丘ベーカリー」と名前をつけて、園内でパン屋さんごっこをしているそう。

-色々な取り組みを進めていますが、社内で浸透はしてきましたか?

少しずつですが浸透してきているんじゃないかと思います。パンの自動販売機がテレビに取り上げられたことが大きかったですね。閉店後、冷凍するために個包装し直す商品もあるので少なからず大変さはあるんですが、冷凍して再活用することが店舗のプラスになるということを理解してくれているようです。

取り組みを始めた時は、自分たちが作ったパンをどうやって多くの人に届けようかという発想でした。しかし、今になってみれば社会的に注目を集めるSDGsにも繋がって、社内にも社外にも良いサイクルが生まれているのではないかと考えています。

-今後この取り組みをどのように広げていこうと考えていますか?

やはり働く人や学生の昼食として買ってもらえる場所を探していきたいですね。可能であれば学校と連携した取り組みができればと考えています。たとえば、学生が「どんぐり」の商品を仕入れて、それを校内で販売することで社会の流れが学べるような仕組みを作りたいですね。もし僕が学生だったらやってみたいと思うので。

SDGsなどの世の中の流れに乗ることを意識して何か取り組みを始めるということは、今後も少ないと思います。私たちは基本的に美味しいパンを作って、ひとりでも多くの人に食べていただく。店舗で余ってしまったパンもできる限り、美味しく食べてもらえるように努力する。そうした「いつも通り」のことを続けていくことで、ここまでお話したような結果的に社会に貢献したり、環境に役立つことを続けていけたらいいなと考えています。

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Profile
チーフ
本間 啓志

どんぐり全店での技術指導をはじめ業務効率化の推進、閉店時商品の再活用企画・運営を担当。将来の目標は、どんぐりが「他のパン屋さんのためのパン屋」になり、共に成長していくこと。さらに海外出店もひとつの大きな夢(個人的な希望はオーストラリア)。